男性衣装

モーニングコート
モーニングコート(morning coat)は男性の昼間の正礼装。夜間には着用されない。別名カット・アウェイ・フロックコート。へそ下あたりの短い前裾から、膝裏下あたりの後裾まで斜めにカットされた黒のジャケットが特徴的。ジャケットと共布のベストに黒とグレーのストライプか黒白小格子のパンツを着用。シャツは立襟でダブルカフス、アスコットタイを合わせる。真珠または白蝶貝のカフスボタン、ポケットチーフは白のスリーピーク、黒の短靴、サスペンダーを使用する。

元々はフロックコートの前裾を乗馬用に切り落とし、朝の散歩服として作られたものが起源。19世紀中頃、昼間の正礼装に制定されたが、現在では過ぎ去った昔の時代衣裳で、結婚式での父親の衣裳や、叙勲や授章等で宮中に参内するときぐらいにしか使用されない。

■モーニングコートの正式な着方

ジャケット: 黒無地のモーニングジャケット。衿先が上向きのピークド・ラペル。シングル、ノーベンツ、鼓釦一つ掛け。
ズボン: 黒とグレーの縞か黒白の小格子模様。裾の折り返しは無い。
シャツ: ウィングカラー(立襟)、ダブル(両穴)カフスシャツ。
タイ: シルバーグレイのフォーインハンドタイかアスコットタイ。素材はシルクサテン。
ベスト: ジャケットと共地かシルバーグレイ。
サスペンダー: 黒を使用。ベルトは使用しない。
カフスボタン: 真珠、または白蝶貝。
ポケットチーフ: 白のチーフをスリーピークにたたんで胸ポケットに挿す。麻または木綿素材の物。
靴: 黒の短靴ストレートチップ。皮製またはエナメル素材のもの。
手袋: 白の綿素材の手袋。甲の部分に三本のピンタックがあるもの。

タキシード
タキシード(tuxedo)は元々は夜の準礼装とされているが、本来の正礼装の燕尾服はもはや前時代的な衣装となり、近年は正礼装もタキシードが一般的になってきている。また、夜のみの礼装ではなく、昼から着用可能になってきている。ブラックタイと言うとタキシードを指す。タキシードはアメリカの呼び方で、イギリスではディナージャケットと呼ばれる。

■タキシードの最も正式な着方

ジャケット: 黒無地のタキシードジャケット。シングル、ノーベンツ、鼓釦一つ掛け。襟はショールカラー(ヘチマ襟)ピークドラペルのどちらでも良いが、ショールカラーがオーソドックスな形。
ズボン: 脇の縫い目に沿って側章(ブレード)が縫い付けられている。
シャツ: 立襟(立カラー)ヒダ(プリーツ)胸・両穴本カフスシャツまたは、立襟・イカ胸・両穴シャツ。
タイ: 黒の蝶ネクタイ。素材はシルクサテン。
カマーバンド:  黒無地。ダブルのタキシードの場合はカマーバンドは不要。
サスペンダー: 黒を使用。ベルトは使用しない。
カフスボタン: ブラックオニキス、または黒蝶貝。
ポケットチーフ: 白のチーフをスリーピークにたたんで胸ポケットに挿す。麻または木綿素材の物。
靴: 黒の短靴(ひも無し)。皮製またはエナメル素材のもの。
手袋: 白の綿素材の手袋。甲の部分に三本のピンタックがあるもの。

タキシードの始まりは、1886年10月10日。ニューヨークのタキシード・パーク倶楽部の正装舞踏会で、全員がテールコート(燕尾服)を着ている中、グリスウォルド・ロリラードという人物が着てきた、真っ赤なスモーキングジャケットが始まりであると言われている。実は彼がテールコートに着替えるのを忘れて、部屋着のテールレスコート(尻尾の無い服)のまま、控室からホールに出て来てしまったのが事の真相。これはタキシード事件と呼ばれている。

燕尾服
燕尾服(えんびふく)とは、男性の夜の正礼装の一つ。テイルコート(Tail coat)ともいい、前身頃が短く後ろ身頃はツバメの尾のように長くなった長くなっていることからこの名がついた。また白い蝶ネクタイを用いるため、ホワイトタイとも呼ばれる。

燕尾服の最も正式な着用法は、黒または濃紺の上着とパンツ(サイドに側章が2本入ったものが基本)に、白のベストは襟の付いたシングルかダブル、ウイングカラーのシャツ(立衿・イカ胸・両穴シャツ)、白の蝶ネクタイ、スタッド釦&カフス釦は白蝶貝、ポケットチーフは白のスリーピーク挿し、靴は黒エナメルのパンプス。着用に際しては、19世紀後半に確立したこの伝統的な着装法を変える事は許されない。

燕尾服は19世紀初めには日常着であったが、形式昇格が起こり礼装化する。しかし現代では既に過ぎ去った昔の時代衣装である。宮廷晩餐会の「夜の正礼装」も、近年は「ホワイトタイ」から「ブラックタイ」タキシードに変遷した。今では、特にドレスコードで「ホワイトタイ」と指定された場合、社交ダンス競技会の選手、オーケストラの指揮者以外には着用の機会は殆ど無い特別な礼服である。

テイルコート→燕尾服

テイルコート(tail coat)は、男性の夜の正礼装の一つ。

ディレクターズスーツ
ディレクターズスーツ(director's suit)とは、男性の昼の準礼装。朝から午後6時(冬は午後5時)までの装い。カジュアルな結婚式なら、花婿が着ても充分な服装。 ディレクタースーツという場合もある。

ディレクターズスーツは、第二次大戦前に欧米で流行した重役の執務服が始まり。そのダークなダブルのスーツのフォーマルの着方が、モーニングに次ぐ昼の準礼装となった。日本におけるディレクターズスーツは、1990年代始め頃に、ブラックスーツ(略礼服)の上着とモーニングのコールズホンを組合わせて商品化されたもの。

■ディレクターズスーツの着方

ジャケット: 黒かダークグレーのシングルもしくはダブルブレスト。ダークスーツの上着でも良い。
ズボン: グレー。縞柄のストライプド・パンツを合わせる。裾はシングルが原則。
シャツ: 白無地のレギュラーカラーで、袖はダブルカフスのもの。ブライダルなどのパーティでは 立衿(立カラー)・ダブルカフスシャツにアスコットタイでも良い。
タイ: シルバー及びシルバーグレーの結び下げ(襟元で結んでそのまま下に下げる結び方)。ブライダルなどのパーティではアスコットタイでも良い。
ベスト: 上着がシングルの場合は、必ずベストを着用する。色は淡いグレー・シルバー・オフホワイトなどの無地系。上着がダブルの場合はベストを省略しても構わない。
サスペンダー: 黒または、白黒の縞柄を使用。ベルトは使用しない。
カフスボタン: 真珠や白蝶貝など、白い石のもの。昼間の装いは、光る石を避けるのが鉄則。
ポケットチーフ: シルク・麻・木綿の白系チーフをスリーピークにたたんで胸ポケットに挿す。
靴: 黒のストレートチップが基本。プレーントゥでもよいとされる。皮製またはエナメル素材のもの。
靴下: 黒無地。または、白黒の縞柄。

フロックコート
フロックコート(frock coat)は上着の着丈が膝まである伝統的な昼の正礼服。黒もしくはグレーのダブルの上着に、立衿シャツとアスコットタイを組み合わせるのが正しい着方だが、現在ではフロックコートはもはや過去の礼装スタイルとなり、結婚式で着用されるくらいになった。スタイルもカジュアル化しており、シングルボタンで、オフホワイトや明るい色のフロックコートもよく見られる。丈が長く大きな身頃なので大きな教会での挙式や、トレーンの長いウエディングドレスと合わせると映える。

現代の昼の正礼服、モーニングの原型となったもので、16世紀のヨーロッパの農民が、外出や農作業の際に着用していた、長い袖の付いた丈の長い服が起源とされる。本来は粗末な布地のものであったが、徐々に形式昇格が起こり、上等な生地を用いて洗練された仕立てが施されるようになり、一般市民の外出服と変遷していく。18世紀には男性の普段の服装のシャツ・ベスト・ズボンにフロックコートとネクタイを合わせることで、英国紳士の外出時の服装として確立し、現代のスーツの原点となった。今でも修道士の着る袖の長い修道士服をフロックと呼ぶ。

ロングタキシード
ロングタキシード(long tuxedo)は、普通のスーツよりも少し長い着丈のタキシード。ファッション性を重視したデザインタキシードで、色は黒だけでなく、白やシルバーグレー、その他カラフルなものもある。ロングタキシードは日本で独自に生み出された準礼装で、時間帯の制限も無く、自由な着こなしを楽しめる。チャペル教会式やカジュアルウエディング、レストランウエディングなど幅広く着用され人気がある。

ロングタキシードよりも少し着丈が長く膝丈で、昼の伝統的な正装として着用されるものをフロックコートという。ロングタキシードのことをショートフロックと呼ぶこともある。

スペンサータキシード
スペンサータキシード(spencer tuxedo)とは、タキシードのなかでも上着丈の短いもので、タキシードの上着がスペンサージャケットのものを呼ぶ。カジュアルなデザインが多い。夜の略礼装として、形式にこだわらないカジュアルな結婚式や披露宴、平服指定のパーティなどで用いられる。披露宴にて新郎のお色直しで着用されることが多い。

ファンシータキシード
ファンシータキシード(fancy tuxedo)とは、黒や濃紺の正式なタキシード以外のタキシードの総称。黒のタキシードよりも略式で準正装とされる。素材にはシルクやベルベット、モヘアなど様々なものが使われる。柄は無地を始め、マドラスチェックやタータンチェックなどの格子柄、ペイズリーや花柄などのプリント柄など。色はカラフルで光沢のあるものなど、色彩や素材、デザインに多様なバリエーションがある。

ジャケットの色や形状に係わらず、黒のズボンを合わせるのが基本だが、最近では上下同色のものも増えている。タイは蝶タイだけでなくアスコットタイを用いることも多い。

ファンキータキシードは1960年代後半に起こったピーコック革命が由来だが、現在ではステージ衣裳、カジュアルなパーティや披露宴などに着られるのみとなっている。

ブラックスーツ
ブラックスーツ(black suit)とは、日本独自のフォーマルな準礼服で、黒のスーツのこと。朝から夜まで、慶事、祝事から弔事まで、着方によって冠婚葬祭に幅広く使える便利な礼服である。

ブラックスーツは、昼の準礼装のディレクターズスーツを基に、1960年代に日本で作られた。高度成長期の新生活運動(冠婚葬祭の簡素化を目指した農村運動)の流れの中で全国に普及する。婚礼にはブラックスーツに白のネクタイが定番とされるが、ブラックスーツは日本だけで通用する準礼装(セミフォーマル)で、海外では礼服ではなく単なる黒のビジネススーツとしてしか見られない。本来の準礼装は昼間はディレクターズスーツ、夜間はタキシードを着用する。